奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産に登録された評価基準(クライテリア)である生物多様性とは、名古屋議定書に「遺伝資源の取得の機会とその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分は、生物多様性の重要課題」と位置づけられることから、生物(遺伝資源)の多様性を保全することは、ひいては地球人類の生存戦略にかかる選択肢を後世に残すべき、顕著で普遍的な価値(国家間の境界を超越し、人類全体にとって現代及び将来世代に共通した重要性をもつ、傑出した自然的な価値)と言え、徳之島における生物多様性とは、すなわち世界に認められ、持続可能的な保全を後世に引き継いでいく約束を世界に示した、島の国際的な人類共通の宝となります。
特別保護地区 特別地域内で特に厳重に景観の維持を図る必要のある地区。
特別地域 優れた風致景観を有する陸域。第1種、第2種、第3種に区分。
普通地域 特別地域及び海域公園地区以外の地域。
とランクごとに区分され、人の活動に制限をかけ、普遍的価値を保護すると同時に、エコツアーガイドの同伴をもって持続可能な利用を推進しています。特に世界自然遺産となるエリアは、特別保護地区及び第一種特別地域となっています。それ以外にも、第二種、第三種特別地域においても、昆虫トラップなどの工作物の設置は違法となり、厳重に処罰される可能性があるため利用には注意が必要です。
徳之島に生息・生育する野生の動植物は、世界的に見ても貴重な財産であるとともに、生態系の重要な構成要素であることから、島民が一体となってその保護を図り、後世に継承していくことを目的とします。
徳之島を含む、奄美群島、沖縄諸島の世界自然遺産エリアのみならず、南西諸島全域において、生息域がごく限られた地域のみであることからも、絶滅の恐れのある希少野生動植物が多くレッドリストに掲載されています。そのうち、人為の影響により生息・生育状況に支障をきしているものの中から、種を指定し、個体の取り扱い規制、生息地の保護、保護増殖事業の実施など保全のために必要な措置を講ずると国によって定められています。
特に生物多様性によって選定された世界自然遺産地域である4地域においては、人類共通の財産である生物の多様性を確保する観点からも、その保存は極めて重要であるとされ、絶滅危惧種の捕獲、譲渡及び生息地における行為を適切に規制するなどの措置を講ずることが、国際的にも求められています。
外来生物法とは、この法律の目的は、特定外来生物による生態系、人の生命、身体、農林水産業への被害を防止することです。そのために、被害を引き起こす海外起源の外来種を特定外来生物として指定し、その飼養、 栽培、保管、運搬、輸入を規制し、特定外来生物の防除等を行うこととしています。
外来種被害予防三原則入れない悪影響を及ぼすかもしれない外来生物を、
●むやみに持ち込まない、捨てない
●飼っている外来生物を野外に捨てない、拡げない
●すでに野外にいる外来生物を他地域に拡げない
三万年以上昔の後期旧石器時代より今日現在に至るまでの歴史の中で、同一島嶼に人類が定住し続けた島は世界的にも稀であることが判っており、世界中でチャンネル諸島(カリフォルニア州)、ニューブリテン島(パプアニューギニア)、キプロス島(キプロス)、そしてここ徳之島のある南西諸島の四地域のみと言われています。
先史時代においてヒトの活動は、環境変動に多大な影響を与えてきたことが、モアイ像で有名なイースター島(人類史は1000年間程)の歴史などからも判っており、地球を大海(宇宙)に浮かぶ小さな島に例え、持続可能な環境利用を図った保全と人類平等の持続可能な開発を目指すSDG’s目標が叫ばれています。
現在でこそ、普及啓発を目的としてSDG’sと言う言葉が使われ、広く認知されてきていますが、こと南西諸島においては、三万年以上の先史時代より、脈々とその暮らしが現代まで継承され、今もその暮らしの端を島の文化に垣間見ることができます。
結果として、人類史よりも長い太古の時代から生き続ける動植物との共存があり、世界に認められる人類共通の宝となった生物多様性が、現代である今も島の森には息づいています。
徳之島は、鹿児島本土から南へ約470kmの洋上に浮かぶ周囲約89km、面積約248㎢の島です。
徳之島町・天城町・伊仙町の3町からなり、島のほぼ中央に位置する最高峰の井之川岳や犬田布(いぬたぶ)岳、北部の天城(あまぎ)岳周辺には亜熱帯性の照葉樹林が広がっています。
徳之島が位置する南西諸島の島々は、1000万年以上前には大陸と繋がっていたとされ、その後の地殻変動で分離や結合を繰り返し、現在の姿になりました。その後も、他の地域から隔離された歴史は長く続き、取り残された生き物がそれぞれ独自の進化を遂げ、国の特別天然記念物のアマミノクロウサギやトクノシマトゲネズミなど固有性の高い、多様な動植物が育まれました。
徳之島のこの豊かな生態系や生物多様性は世界的に貴重であると評価され、奄美大島、沖縄島北部、西表島と共に、日本で5番目となる世界自然遺産に2021年の7月26日に登録されました。